1)血液透析患者における末梢動脈疾患(PAD)の有病率と重症度に対する下肢の動脈石灰化の影響。
推薦コメント:透析患者においてPADは、合併率が高く、重症化の程度によって生命予後に大きく影響します。 本論文では、有病率の他、透析患者に特徴的な血管の石灰化とPADの重症度との関係を、石灰化スコア、CT、足関節上腕血圧比(ABI)、足趾上腕血圧比(TBI)、検査データなどを用いて解析しています。 PADの評価法と検査データの関連を知ることができる内容であるため、PADの重症化を防ぐためにフットケアや末梢循環の評価を行っている透析スタッフに役立つ論文です。
2)透析患者におけるABI、血管石灰化、死亡率に関する研究。
Ankle?brachial index, vascular calcifications and mortality in dialysis patients
推薦コメント:ABIは、PADを評価するための非侵襲的方法で、透析患者においては動脈の石灰化によってABIが異常な高値になると報告されています。 本論文では、透析患者のABIと血管石灰化および死亡率との関連を評価しています。 血管石灰化は2種類の石灰化スコアで評価し、ABI値との関係、そして死亡率との関係を解析しており、体系的にまとめられています。 下肢末梢動脈疾患の管理に関する知識を整理することが可能で、臨床において病態を把握する際に有用な知識を得ることができる論文です。
3)血液透析患者における下肢末梢動脈疾患の早期発見に有用な機器 レーザードップラー血流計:観察的研究。
推薦コメント:血液透析患者においてPADは高頻度で合併し、生命予後に大きく関係するため、早期発見が重要となります。 本論文は、臨床現場で簡便に実施でき、皮膚灌流の悪化を検出できる皮膚灌流圧(SPP)を透析中に測定し、血液透析患者の下肢血流とPADの相間関係を調べたものです。 128名の血液透析患者を対象とし、足底部と足背部における、非PAD群とPAD群間でのSPP測定値について解析を行っています。 PADの早期発見のために日々フットケアや下肢の観察を行っている透析スタッフにぜひ読んでいただきたい論文です。
4)血液透析患者における末梢血管再灌流の予測検査としての経皮的酸素濃度測定。
推薦コメント:健常人に比べ末期腎不全患者(ESRD)では、下肢の血管治療の実施率や下肢切断率が高いと報告されています。 これは、透析患者ではPADの診断と重症度が過小評価されているためと考えられます。 本論文では、PADのスクリーニングとしてTcPO2測定が有効であるかを検討しており、測定値がPADの診断や血管治療が必要な患者の特定につながるかを評価しています。 TcPO2測定を従来のPAD管理に補完することで、より精度高くPADの早期発見、治療に繋がると考えられるため、PAD関連の業務に従事している方、PADに興味のある方にぜひ読んでいただきたい論文です。
5)血液透析患者における透析低血圧と新たに同定された末梢動脈疾患。
推薦コメント:血液透析中の血圧低下、すなわち透析低血圧(IDH)は、下肢への体循環を低下させてPADの症状を悪化させる可能性があります。 さらに、透析患者のPADが重症下肢虚血(CLI)へと悪化進展した場合には、患者の生命予後に大きく影響することとなり、CLIにより下肢大切断を受けた透析患者の1年生存率は40%、5年生存率は15%と極めて不良であることも明らかになっています。 本論文はIDHと新規に同定された下肢PADとの関連性を検討しており、末梢循環障害に影響を及ぼすIDHを来たさない透析治療を行うことが如何に重要かを再認識できる論文です。
6)血液透析患者における血清A-FABP値と末梢動脈疾患との関連性。
推薦コメント: 透析患者におけるPADの重症化予防には、ABIなどのスクリーニング検査が重要です。 一方、メタボリックシンドロームの発症や動脈硬化に関与が示されている血清脂肪酸結合タンパク質(A-FABP)は、健常者に比べ透析患者で測定値が高いと報告されています。 本論文では、透析患者をABI<0.9の低ABI群20名と対照群70名に分け、A-FABP値や患者背景、臨床所見、血液検査値など多くの評価項目を比較しています。 さらに、 A-FABP値とPAD発症の関連性や、PADの予測因子として有用であるかを評価しています。 日常業務で得られた情報を研究のためにどのように利用し、評価しているか? 臨床には研究のネタになるたくさんの情報があることを感じさせてくれる論文です。
©2023, Japanese Society for Technology of Blood purification